わたしの友人、大木一雄さんに薦められて読んだ、面白かった小説を紹介します。
「一九五二年十七歳」 小川悦子著です。
これは、清新な若々しい小説です。
地方から東京に転校してきた女子高2年生の眼、という設定が効果的です。
「東京はいいな」
「いいわね。うらやましい。私も行きたい」
という同級生達の眼を感じながら、そんな気軽なもんじゃないわよ、といいたげな少女の思いが先ず読者を魅きつけます。
高2から高3の暮までの日記体をとっているので心境小説なのかと思っていると、ここにはドラマがあります。
それは敗戦後7年という時期で皇居前広場でメーデー事件が起きたのもこの年ですが、ドラマというのはしかし、こういう時勢そのものではありません。
少女が、「いかに生くべきなのか、わからなくなってしまった」と告白することから始まる、生存の内面のドラマとして、読む者を魅了するのです。
地方の高校の先生あてに出した手紙の一節を引用してみましょう。
―うちは、あまりおもしろくありません。
私がいいかげんだからです。
父は、ときどき私をなぐります。
すると私は身をよじって、身も世もあらぬというふうに、芝居気たっぷりに泣きます。
一年半の別居のあいだにできた溝は、すこし深すぎるようです。
でも、たたかれる感覚って、胸がどきどきして、からだじゅうの血が、ずんずん頭にあがってきて、なんともいえない。
きもちがいいといってもいいくらいです。
父はアル中、母は両肺浸潤。
ちょっとみじめです。―